シリーズ くらしと 憲法 ①
2017年2月1日
弁護士 杉 島 幸 生(関西合同法律事務所)
憲法ってなに?
先の参議院選挙で改憲派が3分の2を占め、安部内閣は、改憲にむけての動きをいよいよ強めています。現在の日本国憲法をよしとするのか、それとも改正すべきであるのか。私たちは、主権者として自分の頭で考えて「答え」をださなければなりません。本シリーズでは、そのための視点を提供したいと思います。
そもそも「憲法」とは、その国の基本的なあり方について定めたルールのことを言います。日本国憲法は、国民が主人公であるという国民主権を採用してます。しかし、いくら憲法で「国民主権」を宣言しても、私たち国民が常に直接政治を行うことは困難です。
そこで私たちは選挙で政治家を選んで政治を任せることとなります。そうは言っても選挙で選ばれた政治家がすべて聖人君子というわけではありません。時には自分や仲良しグループの利益のために、それ以外の人々の権利を侵害するようなことがあるかもしれません。頭に血がのぼって他国と戦争をはじめるかもしれません。
現に過去の歴史を振り返ってみると、多くの国々で「無謀な戦争」「人権侵害」「権力の独裁」という失敗が繰り返されてきました。そこで、「軍事統制」、「基本的人権の尊重」、「権力分立」のためのルールをあらかじめ憲法で決めておき、それに反する政治家の行為を無効と宣言するという仕組みが必要となります。こうした考え方を立憲主義と言います。
憲法改正は、この仕組みの内容やその強弱を変更するということです。ですから私たちは、政治家の誤りを予防するために日本国憲法がどのような仕組みを設けているのかを知っておく必要があります。そのうえで、その仕組みを強くすべきなのか、弱くすべきなのかを判断しなくてはなりません。
憲法の改正について考えるとき、ぜひこうした視点も忘れないようにして頂きたいと思います。