シリーズ くらしと 憲法 ⑥
2017年12月13日
弁護士 杉 島 幸 生
(関西合同法律事務所)
先の総選挙では、自公政権が日本国憲法改正の発議ができる3分の2議席を確保しました。しかし、それは47%の得票で、74%の議席が確保できるという小選挙区効果のたまものです。日本国の主権者は私たちです。日本国憲法は、「国会は、全国民を代表する選挙された議員でこれを構成する」(43条)としているのはその反映です。ですから選挙制度は、国民の多様な意見をできるだけ正確に反映するものであることが求められます。小選挙区はこの点で大いに疑問のある選挙制度です。また小選挙区選挙では、どうしても地域ごとに一票の重みが違ってきます。同じ主権者であるのに国政への影響力が違うことは「法の下の平等」(14条)にも反しています。この点でも小選挙区制度は欠陥のある制度です。
自公政権は、国会の中では多数を確保しました。しかし、彼らも自分たちは、国民の多数から本当に支持されているのではないことをよく分かっているはずです。安倍一強と言われながら一昨年安保関連法や今年の共謀罪審議では、与党はそうとうに追い詰められました。森友・加計疑惑、自衛隊日報隠蔽問題では、日本国憲法にもとづく野党の国会召集(53条)から逃げまわらなくてはなりませんでした。それは主権者である国民の声が気になって仕方がないからです。
安倍内閣が臨時国会初日の冒頭解散という前代未聞の挙にでたのも、市民と野党の共同が大きく育つ前に、北朝鮮問題で国民の不安をあおるだけあおって選挙に突入したいという思惑からだと思います。これでは国会の私物化と批判されるのも当然です。その結果、選挙に勝つという目的は果たしました。しかし、市民と野党の共同は大きく育ちました。これは主権者である国民・市民が、市民の力で政党を動かすという新しい経験でもありました。
この連載では、日本国憲法はただそこにあるだけで私たちの権利を保障してくれるものではない、憲法を武器とした私たち自身の努力が、社会を変えていくのだということをお話ししてきました。主権者である私たちが、権力を監視しつづけ、声を出し続け、行動し続けることが、今こそ求められているのだと思います。
最後に日本国憲法12条(前段)を紹介して、この連載を終わりにしたいと思います。短い間でしたが、ご愛読ありがとうございました。
日本国憲法12条(前段)「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない」。