皮膚科シリーズ⑤乾皮症・皮脂欠乏症(乾燥肌)
2017年1月7日
野田診皮膚科医師
細見由佳子
今回は、これからの季節に現われやすい乾皮症(かんぴしょう)のお話です。
皮膚は人体を被い、外界から保護するとともに、生命の保持に不可欠な様々な機能を営む重要な臓器です。通常、私たちの皮膚は、細胞間脂質(セラミド)や天然保湿因子といった成分が肌の水分を保ち、皮脂と汗が混じり合い皮膚表面に膜を張ることで潤いを保っています。皮膚のバリア機能が損なわれ、乾燥して角質がはがれてしまった状態を「乾皮症」といいます。また高齢になるほど生じやすくなり「老人性乾皮症」と言います。空気の乾燥する秋から冬にかけて現われ、かゆみを伴うのが特徴です。さらに暖房などによる湿気の低下やお風呂での洗い過ぎなどが加わると皮膚の乾燥が一層ひどくなります。症状は、腰回りや太もも、すねによく見られ、痒みがあり、カサカサして粉が吹いたような状態になります。掻くとますます痒みが増して、掻き壊すと炎症性の湿疹(乾燥性湿疹や貨幣状湿疹)に進行します。
日常生活の注意としては、皮膚を乾燥から守るため、洗い過ぎなどで皮脂を取り過ぎないことや部屋の湿度を適度に保つこと、また入浴後には保湿剤を使ってスキンケアをすることが大切になります。具体的には、次の事に気を付けましょう。
①入浴時の石鹸の使い過ぎやナイロンタワシなどで体をゴシゴシ洗わない。石鹸を泡立ててやさしく洗う。湯船のお湯を温め過ぎない。ぬるま湯にする。②過剰な暖房を避け、加湿器などを利用し適度な加湿を図る。③綿製などの刺激の少ない衣類を選ぶ。静電気の起きやすい素材は避ける。④掻きむしり対策として爪を短く切っておく。などです。また、十分な睡眠、栄養バランスの良い食事、規則正しい日常生活を送ることも大切です。
外用薬として皮膚科でよく処方される保湿剤には、ヒルロイド、白色ワセリン、ケラチナミン(尿素)などがあります。また、炎症がある場合は、ステロイド剤、かゆみが強い場合は、抗ヒスタミン剤や抗アレルギー剤の内服薬を用いる場合もあります。皮膚科の診察を受け、適切な保湿剤を使い、潤いのある健やかな肌を目指し、冬を乗り切りましょう!